SAP Fioriとは何か?導入メリットと実装のリアル
Fioriの導入支援を担当しております山田です。ここではSAPのUIであるFioriについて説明致します。Fiori は SAP S/4HANA,Private Cloud,Public Cloudで利用可能なブラウザベースのユーザインタフェース(以下、UI)です。Fioriの登場は2013年に遡りますが、依然として新しい技術として語られる側面が強いです。その理由は、Fiori導入にはコンサルタントにアプリケーション技術とBASIS技術の両方が要求されるため導入のハードルが高いといったベンダー都合のものから、S/4HANAにアップグレードしてもSAP GUIは従来通りに利用できるためFioriへの移行に迫られることがないといった企業様理由のものまで様々です。(詳しくは後述)本投稿では、Fioriとは何か、Fioriから享受できるメリット、Fiori導入が進まない理由、Fiori実装の難点、Fiori実装時に必要な作業の計5点について説明します。
図表1:Fioriのホーム画面
1.Fioriとは何か
FioriはSAPで従来利用されていたSAP GUI と同じUIの一種です。従来の SAP GUI は トランザクションコードの単位で 各種業務を行いましたが、Fiori ではトランザクションコードの代わりにタイルを選択してアプリケーションを実行するようになります。アプリケーションを実行する際にも、ユーザはトランザクションコードを直接入力する、メニューツリーを辿るといった操作ではなく、Fiori画面のタイルを直接クリックするようになり、直感的な操作がFioriによって実現されます。
図表2:Fioriのアプリケーション群(タイル)
また、SAP GUIは利用者のパソコンに SAP GUI を インストールしていましたが、 Fiori は webブラウザから アクセスします。SAP GUI はバージョンが古いとSAP のサポートを受けられなくなるため、SAP GUI のバージョン管理を運用に含める必要がありましたが、ユーザがFioriへの完全移行を達成できた場合にはSAP GUIの利用はなくなるため、SAP GUIのバージョン管理運用が必要なくなり、結果として運用負担の軽減につながります。
2.Fioriから享受できるメリット
Fioriを導入することで企業様が得られるメリットは様々ありますが、ここでは3つ抜粋してご説明します。
①SAP最新技術との連携
SAPが提供する生成AI:JouleやSAP BTPを使用するにあたり、Fioriは導入済であることが前提となっております。Fiori導入を行うことで、将来的な機能拡張や周辺システムとの統合を実現できる環境が整備されます。
②複雑なトランザクションコード操作からの解放
従来、企業のユーザ様が行われていたトランザクションコード操作は、非常に多くの入力可能項目を有していたために、SAP GUIの操作習得にかなりの時間を要しており、企業様の負担になっておりました。FioriのUIでは、特定のロールに必要な項目だけが表示されるようになり、入力ミスの軽減や作業スピードの向上に貢献します。また、Fiori アプリから関連アプリをシームレスに呼び出せる点も、直感的で使いやすい操作環境の実現に貢献しています。
図表3:受注照会アプリから呼出可能な関連アプリ
③マルチデバイス対応
SAPGUIはPCにインストールして使うものでしたが、Fioriはブラウザでの操作となるため、スマホやタブレットからアクセス可能です。部門長が行っていた承認行為をスマホから実行できるようになるなど、マルチデバイス対応は業務のシームレス化に貢献します。
3.なぜ企業のFiori導入は進まないのか
Fiori には SAP GUI にない機能がありますが、それらの機能はないと企業様の業務を遂行できないといったクリティカルなものはございません。Fioriには経営層向けのレポートを作成する機能がありますが、その機能を使わなくとも、例えばSAP GUIを使って必要な情報をダウンロードしエクセルでレポートを作ることで時間はかかるものの代替することが可能です。SAPを利用している企業様は従来の業務を SAP GUIおよび周辺のアプリケーション で実施されてきたケースも多く、「FioriでもSAPGUIでも同じことが出来るのなら、Fioriを覚えるのは大変だからSAPGUIの利用を維持する」と考えられる企業様が一般的です。また、SAP GUIのUIが複雑なものであったことから、企業様にとってFiori を新しく習得することに心理的なハードルがあるのかもしれません。
一方でベンダーに目を向けると、先の段落で記載した「FioriでできることはSAPGUIでも(時間はかかるが)できる」といった理由から、従来のSAPは詳しいがFioriは詳しくない技術者が多いです。S/4 HANA を利用していてもSAP GUI を継続利用でき、ユーザ目線で見ると新しい操作方法の習得に時間を要することが、今の状況に拍車をかけています。Fiori案件に対応できる技術者がベンダー内に少ないことも、企業様のFiori導入が進まない理由の一つでしょう。
また、S4HANA の導入・移行を早期に実施された企業様には、Fiori を実装したが操作に対するレスポンスがあまりにも悪く、使い物にならないと考える方もいたことかと思います。現在ではレスポンススピードの改善策が多数用意されており、快適にご利用いただけるので、再度Fioriの導入を検討されてもよいかもしれません。
4.Fiori実装の難点
Fiori 実装には大きく2つの作業が必要です。
①Fiori 機能を利用可能にすること
②Fiori 機能を企業様が日常業務として操作できるようになること
SAPに馴染みのある人からすると、①は BASIS コンサルタントの作業、②のアプリケーションコンサルタントの作業と考えられるかもしれません。実際に Fioriの有効化作業をすると分かることですが、上記 ①・② の作業をきれいに切り分けることはできません。SAPのPJは アプリケーション・BASISのチームに分けられることが多く、問題が発生した時、「これは BASIS チームで対応する課題」、あるいは「アプリチームの課題」と互いに主張することで課題の対応が滞り、PJが前進しないことがあります。これに加え、アプリケーション・BASISの両方に精通したコンサルタントは希少なため、Fiori 実装を難としているように見受けられます。
5.Fiori実装時に必要な作業
Fiori は SAP GUI と同時利用可能なUIです。これは、Fioriを導入しても ユーザが使用方法を理解できず、Fiori の良さを認識できないままでは、結果としてSAPGUIを使い続ける可能性があることを示唆しています。つまり、Fiori導入は実装よりもユーザが利用するための前準備が大切です。Fiori 導入にあたり、ユーザが SAP GUI から Fiori に 移行するために必要な作業は以下です。
①ユーザ様の既存業務の洗い出し
SAPGUIで実施される作業の多くはFioriアプリケーションにて代替可能です。まずはユーザ様がSAPGUIで実施している既存業務を洗い出します。
② Fiori アプリケーションの調査
項番①で洗い出したユーザ業務について、どの Fiori アプリケーションに代替可能なのかを調査します。調査にはSAP Fiori Apps Reference Libraryを使用します。
https://fioriappslibrary.hana.ondemand.com/sap/fix/externalViewer/#/home
図表4:SAP Fiori Apps Reference Library
トランザクションコードによっては移行アプリケーションを簡単に特定できるものもありますが、時間を要するものもあります。中には置き換え可能なアプリケーションがなく、結果としてWEBGUI を採用するケースもございます。この調査にはテクニカルな技術が要求されるため、SAP コンサルタントの腕の見せ所とも言えるでしょう。
③Fioriロールの運用方針
従来の SAPと同様に、Fioriにおいてもロールの概念がございます。Fiori ロールを既存のロールに相乗りするのか、それとも新規にロールを作るのか、また、新規にロールを作るのであれば、ロールの命名規則をどうするのか等の設計が必要です。
④ユーザ教育
SAP を導入する時と同様にユーザートレーニングを行います。ここのユーザートレーニングの経験がユーザにとっての初めての Fiori 体験になるので、Fioriに好印象を持っていただけるようにデモの内容はよく考える必要があるでしょう。また、ユーザ様が操作に慣れるために、ハンズオンの時間を多く設けるといいでしょう。ユーザ教育の中で得られたフィードバックを課題管理の形式で対応することも大切です。
ここまで、Fioriとは何か、Fioriで得られるメリット、Fiori導入が進まない理由、Fiori実装の難点、Fiori実装時に必要な作業について説明してきました。Fioriを実装し、企業様で使えるようにするにはいくつかのハードルがありますが、実装をすることで享受できるメリットが多いこともまた確かです。当社にはFiori導入の実績があるコンサルタントが在籍しております。Fiori導入に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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