SAPのPP/DSをどう使いこなすか |導入前に決める準備と運用ルール
PPやPP/DSなど生産領域を専門にコンサルティングを担当している壁谷です。
前編では、PPとPP/DSの違いを、能力超過・段取り替え・ペギングの3つの例で見ました。MRPは設備の空きを見ませんが、PP/DSは設備の空きと段取りまで見て、実際に動かせる日程を組みます。では、PP/DSを使い始めるには、何を準備し、現場の何を変えればよいのでしょうか。後編では、準備するものと、運用で変える業務ルールの2つを順に説明します。このコラムの中心は、後者の運用ルールです。
1. PP/DSを動かすために準備するもの
1-1 PP/DSの仕組み:マスタはERP側から引き継がれる
PP/DSは、S/4HANAに組み込まれています。そのため、PP/DSで使う品目や設備のマスタは、PPで管理しているマスタを引き継いで使います。PP/DS専用の品目や設備を、PP/DS側で別に作ることはできません。
品目と作業区は、「Advanced Planning(拡張計画)」の指定を付けたものだけが引き継がれます。指定を付けると、PP/DS側の品目・設備として使えるようになり、計画の対象になります。指定のない品目や作業区は、これまでどおりPP(MRP・CRP)で扱います。
ただし、すべてがPP側のマスタだけで足りるわけではありません。品目、プラント、作業区、BOM・作業手順は、PPのマスタを元に、PP/DS側のマスタ(製品、ロケーション、リソース、PDS)が作られます。一方、段取りマトリクスのように、PP/DS側でだけ登録するものがあります。
PPのマスタ(ERP側) |
| 引き継ぐ範囲 |
| PP/DSの計画データ |
品目 作業区 BOM、作業手順 | → | 「Advanced Planning(拡張計画)」の指定を付けたものだけ | → | 品目 リソース(設備の能力) PDS(BOMと作業手順をまとめた、PP/DS用のマスタ) |

※イメージ図:品目マスタの拡張計画タブ、拡張計画にチェックをつける
また、PPとPP/DSでは、同じものでも、呼び名と確認する画面が違います。PP/DSは、S/4HANAより前にSAPが提供していた別製品「APO」の機能を引き継いでいるためです。PPの「品目」は、PP/DS側では「製品」と呼ばれ、品目マスタ(MM03)ではなく、製品マスタ(/SAPAPO/MAT1)の画面で確認します。
PP(ERP側)の呼び名 | PP/DS側の呼び名 | PP/DS側での設定 |
品目(MM03) | 製品 | PPのマスタから引き継ぐ。PP/DS用の項目(製品ヒューリスティックなど)は、品目マスタの「拡張計画」タブで設定する。PP/DS側の画面は原則として参照のみ |
プラント | ロケーション | 初期転送が必要 |
作業区(CR03) | リソース | 作業区の「拡張計画」の指定で引き継ぐ。PP/DS側でリソースだけを新規に作ることはできない。段取りマトリクスの割り当ては、PP/DS側のリソースで行う |
BOM・作業手順(製造バージョン) | PDS(生産データ構造) | PPの製造バージョンから作る。作成・更新には、転送の処理(CURTOADV_CREATE)の実行が必要 |
(PPにはない) | 段取りマトリクス | PP/DS側でだけ登録し、リソースに割り当てる |
大原則としてマスタの値を修正するときは、元のPPのマスタを直します。PP/DS側の画面は、原則として確認用です。値がおかしいと思ったら、PP/DS側の画面ではなく、元になったPPのマスタを直します。PP/DS側で別に設定が必要なのは、段取りマトリクスの登録とリソースへの割り当てです。品目ごとのPP/DS用の項目(製品ヒューリスティック=どのルールで自動的に日程を組むかの指定、など)は、PP/DS側ではなく、PP側の品目マスタの「拡張計画」タブで設定します。
システム面のポイント:CIFとliveCache APO時代は、ERPとAPOをつなぐCIF(Core Interface)という仕組みで、マスタや計画データを転送していました。転送する対象は、1つずつ選んで登録する必要がありました。S/4HANAでは同じシステムの中に組み込まれ、品目と作業区は、「拡張計画」の指定を付けるだけで、自動でPP/DS側に引き継がれます。ただし、すべてが自動ではありません。プラント(PP/DS側ではロケーション)と、購買契約・納入予定・購買情報レコードは、現在も、転送する対象を選んで登録する設定が必要です。 計画データを持つliveCacheは、HANAデータベースと統合された形だけがサポートされています。別のサーバーを立てる必要はありませんが、導入時にはliveCacheの導入とサイズの見積もりが必要です。 ※liveCacheとは、PP/DSが計画データを高速に処理するための専用の記憶領域のことです。CIFが一部残っていることと、PP/DS側に別のマスタを持つ作りは、APO時代の名残です。このため、PPのマスタを変更したあとは、PP/DS側への反映を確認します(3-1で説明します)。 |
1-2 PP/DS用に追加するマスタ項目
PPの設定(品目マスタ、BOM、作業手順、作業区)は、すでに整っている前提とします。PP/DSのために追加するのは、次の4つです。
項目 | 決める内容 | 現場での意味 |
品目マスタ(拡張計画タブ)の対象指定 | どの品目をPP/DSで日程を組むか | 「この品目はPP/DSで管理する」という目印。全品目ではなく、重要な品目に絞る |
作業区の対象指定 | どの設備をPP/DSの設備として扱うか | ボトルネックの設備だけを対象にして、運用を絞る |
リソース(設備の能力) | 稼働時間、1日あたりの能力(作業区の能力データを使う) | 計画が「設備の空き」を見るための土台。PP/DS専用に別途作るのではなく、作業区の能力データが元になる。現実とずれると、能力内に収まる計画にならない |
段取りマトリクス | どの品目の次にどの品目を流すと、段取り替えに何分かかるか | 色替えの例なら、白→黒15分、黒→白60分のような「順番による時間差」を登録する |
それぞれ、設計の勘所があります。
品目は、上位も対象にします。BOMの途中の階層だけを対象にするのではなく、ある階層の品目を対象にしたら、その上位の品目も対象にする、という考え方でマスタを設計します。一方で、設備はボトルネックだけを対象にします。作業手順の中に、対象外の作業区の工程が含まれる場合の扱いは、設計の段階で確認します。
リソースは、作業区の能力データから作られます。作業区の能力データに、リソースの種類やカテゴリを設定します。これが現実の稼働時間とずれていると、前編の例1のような「能力内に収まる計画」になりません。基本的な設定(たとえば、1回に1つの作業しか処理できない設備か、同時に複数の作業を処理できる設備か)は、作業区から引き継ぐ設定で決まります。また、リソースマスタ側で、PP/DS用に設定するものもありますが、それは、段取りマトリクスの割り当てのみです。
計画の精度は、作業手順の標準値で、ほぼ決まります。PP/DSは、作業手順に入れた標準値のとおりに、日程を組みます。標準値が実際より短いと、PP/DSの上では能力内に収まっている計画が、現場では間に合いません。PP/DSの導入前に、ボトルネックの設備だけでも、標準値を現場の実績と照らして見直しておくことが大事です。
段取りマトリクスは、段取りの分類から作ります。作業手順の工程に、段取りのグループとキーを設定し、その組み合わせごとの時間をマトリクスに登録します。前編の例2のオプティマイザーは、このマトリクスをもとに、段取りと納期遅れのバランスを見て順番を探します。標準のPP(負荷平準化)で使う段取りマトリクスとは別に、PP/DS側の段取りマトリクスというマスタで登録する必要があります。
※イメージ図:段取りマトリクス
なお、有効化の作業は、システム担当が行います。PP/DSを使える状態にする作業(有効化のスイッチ、liveCacheの導入、モデルと計画バージョンの確認)は専門的なため、本稿では省略します。業務側が知っておく点は2つです。1つ目は、有効化に追加ライセンスが必要なことです(前編で触れました)。2つ目は、有効化が終わるまで、品目マスタに「Advanced Planning(拡張計画)」タブが現れず、マスタの準備を始められないことです。導入時のスケジュールは、システム担当と相談して決めます。
2. 運用の方針を決める
マスタを整えて、PP/DSで計画を実行できる状態になっても、それだけでは前と同じです。計画の結果を現場が使わなければ、また計画をExcelで直すことになります。システムよりも、業務ルールの決め方が、成否を分けます。この章では、運用を始める前に決めておく3つの問いを挙げます。答えがないまま始めると、どうなるか。現場で起こりがちなことを、問いごとに添えます。次の「3. 日々の運用ルールを決める」以降で、日々のルール、開始前のチェックリスト、実運用の流れを説明します。
2-1 問い1:誰が、計画を確定するのか
ここでいう「確定」とは、計画の日程に「この日程で生産ラインを動かす」という、決定の印を付けることです。SAPでは「確定(Firming)」と呼び、確定したオーダーは、次の計画実行(自動での組み直し)でも、日程や数量が動きません。つまり、「誰が確定するか」は、「生産計画を、誰が現場に出してよいと決めるのか」を決めることです。
決めておくことは、2つあります。1つ目は、確定する人です。ラインや工程ごとに分ける場合も、1つのラインの計画を確定する人は、1人にします。2つ目は、確定するタイミングです。たとえば、毎朝のアラート確認と組み替えが終わったあと、午前10時までに確定する、のように時刻まで決めます。
もう1つ、PP/DSを入れたあとの、Excelの扱いも決めます。PP/DSの初回計画時は並列して計画し、どれだけ差分が出たかなどを検証するのに役立ちます。しかし、ずっと並列計画するのは現実的ではありません。そのため、PP/DS計画が軌道に乗り始めたら、Excelは廃止するのが一般的です。
2-2 問い2:制約が競合したとき、何を優先するのか
計画立案時、納期、段取り替えの回数、設備の稼働率は、競合することがあります。その際、優先順位を決めていないと、同じ状況でも、納期を守る人と、段取りを減らす人とで、違う計画になります。生産ラインにとって「良い」計画が属人化してしまうことを防ぐためにも、どういう判断軸でどんな要素を優先とするのか決める必要があります。SAPでは、受注の優先度や、オプティマイザーのコスト設定(段取り、納期遅れなど)が、この優先順位にあたります。前編の例2で、納期遅れのコストを高く設定した場合の並びを示しましたが、この設定が優先順位そのものです。
注意:優先順位は、絞った対象の中で決めます。まずは運用設計時に工程で計画に影響する制約を洗い出します。金型、治具、洗浄、作業者など、挙げ出すと数が多くなります。洗い出した制約は、2つに分けます。段取りマトリクスのように、マスタに登録できるものは、優先順位とあわせて設定に落とし込みます。登録しにくい手判断のものは、「3. 日々の運用ルールを決める」で、ルールにして残します。
2-3 問い3:どこから先を、動かさないのか
直近の計画は、材料の手配や段取りの準備がすでに動いています。ここを計画実行のたびに入れ替えると、現場が混乱します。SAPでは、「計画タイムフェンス」を品目ごとに設定でき、その計画タイムフェンス内はヒューリスティックによる自動変更の対象外になります(計画タイムフェンスを2週間に設定すると、3週間目以降の計画のみがヒューリスティックにて自動変更される)。計画タイムフェンス内は手動の変更だけが可能です。さらに、手動で「確定」した計画も、自動では動きません。この期間を確定期間として決めます。確定期間の長さは、材料の手配や段取りの準備にかかる日数を目安に決めます。
3. 日々の運用ルールを決める
決めた方針を、日々の運用のルールに落とします。
3-1 マスタ更新、計画変更、実績入力のルール
運用のルールは、3つ決めます。
1つ目は、マスタ更新のルールです。段取り時間、能力、稼働カレンダーは、都度現場で変わります。変わったときに、誰が、いつまでに、マスタを更新するのかを決める必要があります。更新が遅れると、PP/DSは古い段取り時間や能力で計画を組み、計画と実際がずれていきます。また、品目や作業区を更新したあとは、PP/DS側に反映されているかも確認します。
なぜ、PP/DS側への反映を確認するのか。PP/DSは、PPのマスタをそのまま見ているのではなく、PP/DS用に作り直したマスタ(リソースやPDS)で計画を組むからです。APO時代は、ERPとAPOの間で、マスタをCIFという仕組みで転送していました。S/4HANAでは同じシステムの中に入りましたが、「PP/DS側に別のマスタを持つ」作りと、一部のCIFは残っています。そのため、PP側のマスタを直したのに、PP/DS側に反映されておらず、古い値で計画が組まれる、ということが起こります。とくに、BOMや作業手順を変えたときは、PDSを作り直す処理(CURTOADV_CREATE)を実行しないと、PP/DS側に反映されない場合があります。マスタ更新のルールには、「更新後に、PP/DS側の画面で反映を確認する人」まで含める必要があります。
2つ目は、計画変更時の対応です。急な変更が入ったときに、再計画を誰が実行し、結果を誰が確認し、現場へどう連絡するのかを決めます。確認には、前編で見たアラートモニタと、製品ビューのペギングを使います。どの受注に、どれだけ影響するかを見てから、現場に伝えます。
3つ目は、実績入力のルールです。計画は、生産オーダーの実績(着手・完了)をもとに組み直されます。入力が遅れると、完了したはずの作業が計画に残り、翌朝のアラートが実態とずれます。誰が、いつまでに実績を入力するのかを、決めておきます。
3-2 手判断のルール:マスタに載らない制約の扱い
運用の方針を決める際に「手判断のもの」に分けた制約は、ルールにして残します。たとえば、詳細計画ボードでオーダーの色を分けて、「この品目は午前中に流さない」ものを見分けられるようにします。また、段取りキーに「白」「黒」といった、現場で通じる名前を付けておけば、担当者が変わっても、同じ並べ方になります。
具体例を挙げます。電圧200Vの品目は赤、220Vの品目は青、のように、色の意味を先に決めておきます。詳細計画ボードでは、オーダーが赤と青に色分けされて並ぶため、「午前中は赤をまとめて流し、午後は青をまとめて流す」ように、目で見ながら手で並べ替えられます。電圧の違う品目を交互に流すと、切り替えの手間が増える工場では、とくに効果があります。マスタに登録しにくい制約でも、色を決めておけば、担当者の経験に頼らず、同じ並べ方ができます。色の意味は、一覧にして残しておきます。
4. 運用開始前チェックリスト
2章・3章の内容を、運用開始前に決めておくことの一覧にまとめます。「決める人」は例です。「決めないと起きること」は、決めずに始めたときに起きがちな問題です。
決めること | 決める人(例) | 決めないと起きること | 決め方の目安 |
計画を確定する責任者 | 生産管理の責任者 | 現場が各自で計画を直し、計画と実際がずれる | 計画を確定する人を、1人に決める |
制約ごとの優先順位 | 生産管理・製造 | 計画のたびに判断がぶれる | 納期・段取り・稼働率の優先順を決め、優先度やマスタ設定に落とし込む |
対象にする工程(ボトルネック) | 生産管理・製造 | すべてを対象にすると、マスタ整備が終わらず、運用が始まらない。始まっても、手直しが多すぎて使われなくなる | ボトルネック工程の1ラインから始める |
確定期間(計画タイムフェンス) | 生産管理・購買 | 直近の計画が計画実行のたびに入れ替わり、手配が混乱する | 計画タイムフェンスの日数と、確定のルールを、運用開始前に決める |
マスタ更新のルール | 生産管理・製造技術 | 段取り時間や能力が古くなり、計画が現実と合わなくなる(能力内に収まる計画にならない) | 更新の担当と期限を決め、変更を見落とさない流れにする |
計画変更時の再計画と連絡の手順 | 生産管理 | 変更が現場に伝わらない | 再計画の実行者、結果の確認者、現場への連絡方法を決める |
実績入力のルール(誰が、いつまでに) | 製造・生産管理 | 計画に完了済みの作業が残り、アラートが実態とずれる。担当者がアラートを信用しなくなる | 入力の担当と締め時刻を決め、朝のアラート確認の前に反映されるようにする |
手で判断するルール(色分け・段取りキーの名称) | 生産管理・製造 | 担当者によって並べ方が変わる | 色分けと段取りキーの名称を決め、一覧にして残す |
5. 運用開始後の進め方
5-1 運用の流れ:誰が、いつ、何をするか
1日の流れの例です。工場ごとに、時間帯や担当は変わります。
タイミング | 誰が | 何をするか | 使う画面・機能 |
初期計画 | 生産管理の担当者 | PP/DSの計画実行(対象の品目)とMRP Live(対象外の品目)を実行し、自動で日程を組む ヒューリスティックとオプティマイザーを使う | MRP Live、ヒューリスティック、オプティマイザー |
計画確認 | 生産管理の担当者 | アラートモニタで、納期遅れ・能力超過を確認する | アラートモニタ |
手動修正 | 生産管理の担当者、製造 | アラートの出た設備を中心に、ボード上で組み替える | 詳細計画ボード |
調整後 | 計画の責任者 | 計画を確定し、現場へ連絡する | 確定(Firming) |
確定後 | 生産管理の担当者 | 計画オーダーを生産オーダーに変換し、リリース(製造指図の発行)して、現場に渡す | オーダー変換、リリース |
随時 | 製造、生産管理 | 生産オーダーの実績(着手・完了)を入力する | 実績入力 |
夕方の計画実行について、補足します。S/4HANAでは、PP/DS対象の品目と対象外の品目を、MRP Liveという1つの計画実行で、一緒に計画できます。ただし、SAP推奨では、PP/DSの計画実行を先に行い、その結果をもとに、MRP Liveで対象外の品目を計画する順序が示されています。実際の順序は、BOMの構成と運用に合わせて決めます。また、日々の確認でも、画面が分かれます。PP/DS対象の品目は、製品ビュー(/SAPAPO/RRP3)と詳細計画ボード、対象外の品目は、これまでどおりPP側の画面(在庫/所要量リスト MD04 など)を使います。
担当者ごとに、見るアラートの種類や対象設備を絞ることもできます。PP/DSでも、担当の分け方は、PPと同じMRP管理者です。朝の確認が、自分の担当範囲だけで済みます。
5-2 自動化できるのは8割までと心得る:初回は5割から始めて、8割を目指す
自動化で組める計画は、おおよそ8割程度です。PP/DSの自動化だけで100点の計画を出せるのは、制約の少ない計画だけで、制約が多いほど、自動で組める部分は減り、残りは、どうしても人の判断が必要になります。その部分は、詳細計画ボードで、色を確認しながら調整します。
そのため、最初から高い完成度は目指しません。初回の計画は、5割程度の出来から始めて(従来のExcel計画と並行する)、運用の中で8割まで上げていくことを目標にします。目安は、手直しなしで、そのまま現場に出せたオーダーの割合です。
制約が多いほど、自動で組む部分と、手作業と割り切る部分を、分けて判断する必要があります。自動で組む部分は、マスタに登録できる制約です。たとえば、段取り時間は、品目の組み合わせで決まるため、段取りマトリクスに登録でき、自動化に向いています。一方、「この品目は午前中に流さない」のような、例外的で数の多い条件を、すべてマスタに登録しようとすると、保守が追いつきません。こうした条件は、手作業と割り切り、詳細計画ボードの色分けで、人が見て調整します(3-2)。
大事なのは、手直しの中身を記録することです。何を、なぜ直したのか。それがマスタに登録できることなら、マスタに戻して、自動で組める部分を増やします。登録しにくいことなら、手判断のルールに加えます。この繰り返しで、5割だった計画が、8割に近づきます。残りの2割は、手判断として残りますが、それは失敗ではなく、設計どおりの姿です。
6. まとめ
前編・後編を通した要点は、次の3つです。
- MRPは設備の空きを見ませんが、PP/DSは設備の空きと段取りまで見て、実際に動かせる日程を組みます
- PP/DSはS/4HANAに組み込まれ、ERPのマスタを引き継ぎます。「拡張計画」の指定と、リソース・段取りマトリクスの準備が必要です。PP/DS側の呼び名と確認する画面はPPと違うため、マスタ変更後は反映の確認も必要です
- 成否を分けるのは業務ルールです。誰が決め、何を優先し、どこから先を動かさないかを決めて、5割の計画から始めて、8割を目指します。残りの2割は、手判断です
PP/DSが自社に必要かを迷う場合は、前編の「向く工場」の目安をご確認ください。標準のCRPを、現実的な工夫で使いこなした2社の実例は、こちらです。
SAPのCRPをどう使いこなすか |標準CRPの弱点を乗り越えた2社の実例
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